母から電話がかかってくる回数が、少しずつ増えていた。
「電球が切れた」「病院まで車で送ってほしい」。一つひとつは小さな頼みごとだ。それでも46歳の高校教師・修一と、44歳で介護職の妻・恵には、数年後の暮らしを考える合図に思えた。
二人に子どもはいない。今の2LDKには、保護猫が二匹。母を迎えるには狭いが、すぐに同居が必要なわけでもなかった。
「必要になってから探すより、今から一部屋空けておこうか」
使わない部屋ではなく、待てる部屋
見つけたのは、千葉市緑区おゆみ野中央八丁目の中古戸建だった。土地183.25㎡、建物108.68㎡の4LDK。2008年築で、価格は3,480万円。
鎌取駅から徒歩27分。駅近とは言えないが、二人とも日常の移動は車が中心だ。母の家や勤務先、病院、買い物先までを車で結ぶと、生活の範囲に無理がなかった。
四つある個室の一つを、将来の母の部屋にする。それまでは客間として使い、猫が日向ぼっこをする場所にしてもいい。
将来を決めすぎない広さ
同居の話をすると、母は「まだ一人で大丈夫」と笑った。
修一も、すぐに生活を変えてほしいわけではない。ただ、階段の上り下りが難しくなったとき、体調を崩したとき、選べる場所があることが大切だった。
広い土地には駐車や庭の余裕がある。恵は介護の仕事を通じて、玄関から居室までの動線や、家具を置いた後の通り幅を確かめた。今の楽しさだけでなく、身体が変わった後にも暮らせるかを二人で話した。
空室にある約束
引っ越し後、母はまだ以前の家で暮らしている。空けてある一室には、小さなベッドと母の好きなラジオだけを置いた。
週末に母が泊まりに来ると、猫たちは先にその部屋へ入って窓辺を取る。母は「私より先に使っている」と笑う。
その部屋が本当に必要になる日は、来ないかもしれない。来るとしても、ずっと先かもしれない。
けれど、選択肢があることで、三人は今の暮らしを急いで変えずに済んでいる。
家の広さは、物を置くためだけにあるのではない。家族が次の決断をするまで、静かに待ってくれる余白にもなる。
※物件情報は掲載時点のものです。売約済みや価格変更の場合があります。最新情報はYahoo!不動産の物件ページでご確認ください。記事中の月々返済額はシミュレーションによる目安であり、実際の返済額は借入条件により異なります。
※本記事はフィクションです。登場人物・エピソードはすべて架空のものです。本記事はアフィリエイト広告を含みます。掲載画像はイメージであり、実際の物件とは異なる場合があります。


