夫が川崎に拠点を持つと決まった時、田村彩香は「じゃあ私が家を選ぶ」と言った。
雄也は少し驚いた顔をしたが、すぐに「頼む」と言った。
条件は一つだった
彩香は29歳。モデルとして活動していたが、長女が生まれたタイミングでほぼ引退した。今は子ども4人の母親として、家族の生活を中心で支えている。
夫が海外にいる間も、夫がJリーグに戻ってからも、子どもたちのそばにいるのは自分だということを彩香は知っていた。だとすれば、自分が選んだ場所に住む方が、家族全員にとってよかった。
条件はシンプルだった。実家に近いこと。それだけだ。
彩香の実家は世田谷区千歳烏山にある。結婚してから何度か引越しをしたが、雄也のヨーロッパ移籍を機に子どもたちを連れて実家の近くに戻っていた。3年間、母に助けてもらいながら4人を育てた。その距離感が、自分にとってちょうどよかった。
世田谷区上祖師谷という場所
千歳烏山から歩ける距離に、上祖師谷という静かな住宅街がある。芦花公園に近く、緑が多く、道が広い。子どもが自転車で走り回れる。小学校まで1km以内で、近くに公園がある。
騒がしい場所が苦手だった。モデル時代、都心での撮影や仕事が多かったからか、帰る家は静かなところがよかった。上祖師谷を初めて歩いた時、「ここだ」と思った。
2億1,980万円の家
4LDK、土地134㎡、建物152㎡。LDKは22帖で、南道路に面していて日当たりがいい。ビルトインガレージがあって、雄也の車が入る。太陽光発電と蓄電池が標準装備で、免震構造。床暖房付き。
子どもが4人いる家の「仕様」として、彩香が一つひとつ確認した。収納が足りるか。動線は無駄がないか。子どもが走り回っても大丈夫な構造か。LDK22帖という広さは、4人が同時にリビングで過ごせることを意味している。それが彩香の中では外せない条件だった。
2億1,980万円という価格を夫に伝えた時、雄也は「わかった」とだけ言った。価格の話より、彩香が選んだという事実の方が大事だと思っていた、と後で言った。
実家との距離
引越し後、週に2〜3回は母が来てくれる。子どもの送迎を手伝ってくれたり、一緒に夕食を食べたりする。その距離感が、3年前から変わっていない。
「ここを選んだのは、実家が近いからだ」と彩香は迷わず言う。世田谷の静けさも、南向きのLDKも、ビルトインガレージも、全部大事だった。でも一番の決め手は、歩いて行ける距離に母がいることだった。
夫が来る週末
雄也は試合のない週末に来る。4人の子どもが玄関まで走ってくる。LDKに全員が集まる。そういう時間のために、この家がある。
川崎の部屋には、試合のための機能がある。この家には、家族のための空間がある。2億1,980万円は、彩香がそう判断した値段だ。
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