東京の夜景より、朝の海を選んだ。都内の経営者夫婦が逗子・小坪の7,498万円のマンションへ移住するまで

逗子・小坪の海を望むマンションのイラスト 神奈川

東京の夜景は、仕事が終わっていないことを思い出させた。

拓海と奈緒はともに45歳。拓海は小さなIT企業を経営し、奈緒はブランド企画の会社を営んでいる。港区の高層マンションは、取引先にも空港にも近く、二人の忙しい生活に合っていた。けれど窓の向こうに明かりが多いほど、パソコンを閉じる理由を失った。

子どもは独立し、二人で住むには部屋が余り始めた。これからの家に必要なのは、都心の住所ではなく、仕事から戻る感覚なのではないか。そう考え、週末ごとに逗子と葉山を歩いた。

海が見えることより、海のある日常

二人が見つけたのは、逗子市小坪四丁目の中古マンションだった。専有面積約85平方メートルの3LDK、5階の西向き住戸。1997年築で、リフォーム済み。価格は7,498万円。バルコニーから逗子マリーナや江の島、天候によっては富士山を望めるという。

逗子駅からはバス利用で、都心のような利便性はない。管理費と修繕積立金も毎月必要になる。海に近い建物だから、塩害や風、将来の修繕計画も確認した。それでも、眺望を旅行の景色ではなく、毎朝の背景にできることが二人には大きかった。

内見の日、奈緒は窓辺に立ったまましばらく動かなかった。港へ戻る船が小さく見え、雲の影が水面を移動していた。「この景色なら、朝に今日を始められるね」と言った。

仕事を持ち込む場所を、一室だけにする

3LDKのうち一室は、二人で使う書斎にした。オンライン会議用の机を向かい合わせず、窓に対して横向きに置く。仕事の資料はすべてその部屋へ収め、リビングには持ち出さない。もう一室は、子どもや友人が泊まれる客室にした。

東京では、家全体が仕事場だった。小坪では、書斎の扉を閉めれば生活へ戻れる。リビングから海を眺め、夕方になれば近所を歩く。拓海は以前より早くパソコンを閉じるようになり、奈緒は夕食を急いで済ませなくなった。

二人とも仕事を縮小したわけではない。都内へ行く日も多い。むしろ、集中する時間と離れる時間がはっきりしたことで、判断が速くなった。

移住は、働かないためではない

友人からは「半分引退だね」と言われた。だが二人にとって、逗子への移住は仕事を辞める準備ではなかった。これから先も働き続けるため、生活を仕事の外側に取り戻す選択だった。

朝、拓海はコーヒーを入れて海を見る。奈緒は天気がよければ港の近くまで歩く。始業時刻は同じでも、その前に一度、自分の時間を持てるようになった。

都内で会食がある日は帰宅が遅くなる。駅からバスに乗り、坂道を歩くと、やはり距離を感じる。それでも玄関を開け、静かなリビングへ入ると、移動が生活の切り替えになっていることがわかった。

夜景ではなく、朝を基準に選ぶ

引っ越して最初の冬、富士山がはっきり見えた朝があった。奈緒は写真を撮り、すぐにスマートフォンを伏せた。景色を共有する前に、自分たちだけで眺めたかった。

東京の家を選んだとき、二人は夜の便利さを基準にした。遅くまで働けること、すぐ帰れること、明かりが消えないこと。小坪の家では、朝にどんな気持ちで目覚めるかを基準にした。

人生の後半に必要だったのは、仕事へ近い家ではなく、自分たちへ戻りやすい家だった。

東急ドエル・アルス逗子ウィングコースト

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