「引っ越した理由、テスラのためなんですよ」と言うと、友人たちは大抵笑う。
でも佐藤健太は本気だった。
補助金の差額という現実
健太は36歳。渋谷のスタートアップでエンジニアをしている。フルリモートで週1〜2日だけ出社すればいい。以前は横浜市の賃貸マンションに住んでいて、生活に特に不満はなかった。
テスラを買おうと決めたのは1年前だ。EV補助金を調べ始めて、最初に気づいたのが都道府県による補助金の差だった。東京都は国の補助金に加えて独自の補助金があり、合計で最大230万円近くになる。一方、神奈川県には個人向けのEV購入補助金がほぼ存在しない。
この差は、引っ越し費用を上回る。健太はスプレッドシートを開いて計算した。「東京都民になれば、テスラModel 3が実質200万円以上安く買える」。数字を見た瞬間、引っ越す気になった。
世田谷区玉川台という選択
どうせ引っ越すなら、住みたい場所に住もうと思った。渋谷へのアクセスが良く、駐車場があって、静かな住宅街。条件を整理していくと、自然と世田谷区の用賀・玉川台エリアが浮かんだ。
用賀駅から田園都市線で渋谷まで13分。世田谷区玉川台1丁目は、二子玉川にも歩いて行ける距離の閑静な住宅街だ。そして街を歩くと、テスラがいる。白いモデルSが路地に止まっていたり、黒いモデルYが駐車場から出てきたりする。「EVが自然に存在する街」という感覚があった。
5,190万円とリノベーション
物件は1978年築の築49年、鉄筋コンクリート造。でも2026年6月に全面リノベーション済みで、キッチン・ユニットバス・洗面台・トイレ・全室クロスと床を張り替えている。内見した日、「築年数とは思えない」というのが正直な感想だった。
2LDKの46㎡は、一人暮らしには十分な広さだ。南東向きの4階で、日中は自然光で仕事ができる。リモートワーク中心の生活には、光の入り方が大事だと最近気づいていた。
頭金1,000万円を入れて35年ローンを組むと、月々約14万円。敷地内駐車場が月25,000円で借りられる。今の横浜の家賃より高くなるが、「テスラの補助金差額で数年分のコスト差を回収できる」という計算が頭にあった。

住民票を移した日
引越し翌日、区役所で住民票を移した。これで東京都民になった。
その翌週、テスラの正規店に行って補助金の申請手続きを始めた。都の担当窓口に連絡を取り、必要書類を揃えた。手続きは思ったより複雑だったが、金額が金額だけに手を抜く気になれなかった。
駐車場の契約が完了して、200V電源のコンセント工事の許可が管理組合から下りた時、現実になった気がした。
テスラのある生活
納車後の最初の週末、首都高に乗って山梨まで日帰りドライブをした。途中、サービスエリアのスーパーチャージャーで30分充電した。コーヒーを飲みながら待っていると、横に同じテスラが停まって、オーナー同士で少し話した。
「どこに住んでるんですか」と聞かれた。「用賀です」と答えた。
その響きが、思ったより気に入った。
5,190万円は、テスラのためだけではなく、この住所のためでもあったと、最近思っている。
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